ツッコミを入れる
統合データベース講習会:酒類総合研究所 報告
3月10日(水)広島県東広島市の酒類総合研究所にて統合データベース講習会を開催いたしました。(当日のプログラムはこちら)
独立行政法人酒類総合研究所は日本で唯一のお酒に関する国の研究機関です。その歴史は古く大蔵省醸造試験所として明治37年に設置され、昭和20年には大蔵省主税局醸造試験所と改称、その後国税庁の所轄となるなどを経て、平成13年に独立行政法人として新しくスタートしました。
折しも講習会前日から中国地方は雪となりましたが、所内と所外の広島大から参加された方も含めて27人の方が参加されました。参加者のみなさんにアンケートをとったところ統合DBプロジェクトをご存知であったのは3人でしたので、プロジェクトを知っていただくよい機会となりました。
講習会の質疑応答では、「アノテーションを含め、他のDBからデータを取得したときにデータ形式が統一されておらずがユーザからわかりにくい。なにか良い解決法はあるのでしょうか? データ形式共通化の動きはあるのでしょうか?」「自分のデータでDBを作りたいとき、具体的にはDBCLSにどうやってアプローチしたらよいでしょうか?」といった質問をいただき、DB構築に関して現場の研究者の方が実際にどのように困っておられるのか、どのような点を解決すればよいのかについて、統合プロジェクトにとっても大いに参考になりました。
講習会終了後は、醸造技術基盤研究部門と醸造技術応用研究部門を見学させていただきました。基盤研究部門では麹菌研究グループの実験室を拝見、麹菌ゲノム解析、麹菌EST解析についても話を伺うことができました。国際コンソーシアムで行われた麹菌Aspergillus oryzaeのゲノム配列決定(PMID- 16372010)には酒類総合研究所のRIB40株が使われましたが、まだまだ遺伝子同定並びに機能解析は続いている段階で、データはNITEのDOGANから閲覧できる他、酒類研究所のオリジナルデータを加えたゲノムデータベースAspergillus oryzae RIB 40 genome DB、並びにAspergillus oryzae EST DataBase が利用できます。現在はカスタムアレイも利用し株ごとの性質の違いをゲノムや発現レベルで解析されているそうです。
次の応用研究部門では麹菌や酵母とその酵素を利用した環境保全の研究開発や、バイオディーゼルの生産についてなど、昨今話題の中心である地球環境の問題解決に関連する研究を説明していただき、小さな菌のプラント工場のような実力に大変驚かされました。
最後に製造実験棟を工場見学させていただき、発酵中の日本酒を見せていただくなどしました。全体を通して酒類研究所においてもデータベースは重要なポジションを占めていると強く実感いたしました。
講習会に参加された皆さま、またお世話になりました皆さまありがとうございました。雪景色とともに思い出深い講習会となりました。
ライフサイエンス統合データベースセンター 川本祥子
ツッコミを入れる
アブラムシゲノム配列の解読
エンドウヒゲナガアブラムシゲノムのドラフト配列が公開されました。アブラムシゲノム解析コンソーシアムによる成果で、ゲノムの解読とアノテーションともに、日本からも複数の研究者が参加をしています。
●論文:Genome Sequence of the Pea Aphid Acyrthosiphon pisum
The International Aphid Genomics Consortium
PLoS Biol 8(2) (February 2010)
アブラムシは集団で植物の栄養分を奪うと同時に、植物ウイルスの媒介者でもあることから農業害虫としてよく知られている虫です。子供の頃、庭でてんとう虫を捕まえたときに「アブラムシを食べてくれる良い虫なんだよ」と諭されて「アブラムシ=しつこい悪者」というイメージができてしまった人も少なくないのではないでしょうか? このアブラムシ、単為発生と有性生殖を切り替えるところが大量発生するポイントだったり、アミノ酸供給に役立つブフネラという細菌と2億年も昔から共生関係にあったり、環境に応じてさまざまな表現型をもった個体が生まれてくるなど、特異な現象をみせてくれる虫です。こうしたアブラムシの生物学的な面を知るとますます、「したたかに生きているなあ」もう少し良く言えば(?)、「一寸の虫にも五分の魂とはこのこと!?」と思わずにはいられないのは私だけでしょうか。今回解読したゲノムの解析から、さらに新しい知見が色々と得られていますが、それについては各分担機関のプレスリリースに詳述されていますので、論文と合わせてご覧ください。また、共生細菌のブフネラについては既に2000年にゲノム解読が完了していましたが(プレスリリース:理研、東大)、今回、宿主のゲノム解読と同時にあらためてブフネラゲノムについても解読、既知のブフネラゲノムとの比較解析を行っています。
●プレスリリース:理研:世界的な農業害虫「アブラムシ」のゲノム解読に成功
●プレスリリース:基礎生物学研究所:世界的な農業害虫「アブラムシ」のゲノム解読に成功
ここでは、統合DBの観点から今回の報告をながめてみたいと思います。配列解読の手法としては次世代シーケンサを用いた解析ではなく従来のサンガー法によるものです。今回のプロジェクトでは配列解読だけでなくアノテーションの仕事に関しても、コミュニティのなかで協力し、積極的に取り組んでいる様子が伺えます(アブラムシゲノム解析コンソーシアムのWikiも公開されています)。遺伝子モデルについては各種プログラムによる自動的な予測に加えて、そこから着目した2000以上の遺伝子に対しては人手によるキュレーションが施されています。遺伝子モデルに対する機能アノテーションについては、論文を読む限りでは今のところ、系統樹解析をもとにしたオーソログの予測からショウジョウバエのGene Ontologyを自動的に付与しています。これらのアノテーション情報を含むゲノム配列データには、 AphidBaseからアクセスすることができます。
●データベース:AphidBase
ツッコミを入れる
古代人ゲノム配列の解読
ヒト関連のゲノム解読については、ネアンデルタール人のゲノム配列の一部解読、 個人ゲノムの解読と広がりを見せていますが、 今回は古代人のディプロイドゲノムの大半(80%)を解読したとの報告がでてきました(Nature. 463, 11 Feb. 2010)。 グリーンランドの永久凍土から出土した4000年前の男性の毛髪を用いていますが、 他の頭骨などの発掘はこれまでほとんどなく、絶滅してしまったこの古代人の姿を描くことは難しかったとのこと。 SNP解析が可能なほど質の高いゲノム解読に成功したおかげで、皮膚や目の色など古代人の顔の形質を推測し、現代人とのつながりを想像できるようになったことにはインパクトを感じますね。この古代人は極東アジア地域に住む民族にもっとも近く、5500年ほど前にシベリアから移住してきたのではないかと考えられるようです。
実際の解析の流れは、ライブラリー作成をデンマークのコペンハーゲン大学 Copenhagen ancient DNA laboratoryが担当、配列解読については北京ゲノム研究所をはじめとする施設のIllumina GAⅡプラットフォームを用いて行われています。ゲノム解析データにはAncient Genome Databaseからアクセスできます。
ツッコミを入れる